会計士の気まぐれ日記

ビジネスに関する有益な情報をお届けします。たまに思ったことを徒然なるままに書きます。

キーエンスの高利益率の秘密

ぼちぼち上場企業は四半期決算短信を発表していきている頃ですね。僕も、クライアント以外の会社の財務諸表もちらほら興味本位で見ています。

適当に、自分の知っている会社で「この会社って、どんな財務諸表になってるんやろ?」と思ったらそこの会社の財務諸表を見に行く感じです。これが色んな発見があって結構面白い。

 

 

そんな中、めちゃめちゃ気になっているはずなのに、なぜかまともに財務諸表を見たことがない会社がありました。それがキーエンスです。有名な話ではありますが、営業利益率が50%を悠に上回るという、異常とも言える高利益率をキープしている会社ですね。仕事柄結構色んな会社の財務諸表を見ますが、営業利益率が50%を超えている会社はほとんどありません。

では、キーエンスは一体どういう仕組みになっているのか、こんな利益率を維持できるのはなぜなのか、今日はそれを簡単に追及してきたいと思います。

 

 

 

周知の通り、キーエンスはセンサーを開発・販売している会社です。どういうビジネス体系になっているのか、有報を覗いてみます。

 

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これは、キーエンスの事業系統図です。

これを見ると、基本的にキーエンス自体は製造はほぼ行っておらず、100%子会社であるキーエンスエンジニアリングに材料を提供して、それを作ってもらい、完成した商品を専ら販売するという事業形態であることがわかります。

海外でも販売を行っていますが、国内での販売が売上の約80%を占めています(連結売上高が3,875億円で単体売上高が3,058億円)。そのため、国内での事業活動がメインといえるでしょう。

 

 

 

続いて、BSはどのようになっているのかを見てみます。

 

 

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見ての通り、キーエンスは最近決算期の変更をしているため、期間比較はなかなかできません。笑

といっても、今回は期間比較が目的ではないため、当年度の数値だけ見ていきましょう。

 

 

まず驚いたのが、①有形固定資産がほとんどないということ。総資産は1兆円以上あるのに、有形固定資産はわずか170億円程度。これがファブレス企業と言われる所以です。本社ビルや営業拠点の建物くらいしか持っておらず、製造するための工場はほとんどないと考えられます。

 

 

そして次に、②驚愕するほどのキャッシュリッチな企業だということに驚きました。この規模の会社で総資産の3分の1も現預金を留保しているケースはなかなか珍しいと言えます。ここから、キーエンスがどれだけ0堅実な企業なのかが窺えます。普通これだけ現金が余っていたら、どこかの会社を買収したり、新規事業を立ち上げたりするはずです。しかし、キーエンスはそれをしません。

また、キーエンスは無借金企業です。運転資金を自己で賄わなければならない影響を差し引いたとしても、借入のリスクがない分もっと積極的な投資を行うのが普通だと思います。それをしない理由は財務諸表を見るだけではなかなかわかりませんが、おそらく、経営面において規模よりも質を重視する滝崎会長の方針なのでしょう。

 

 

そして、③有価証券の保有残高が企業規模と比較して異常に多いことも目に付きます。

流動固定合わせて、5,600億円くらい保有していますね。この有価証券の内訳が、以下のとおりです。

 

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これを見ても、堅実さが顕著にでています。投機性が比較的高い株式等にはほとんど投資せず、安全性の高い国債とその他がほとんどを占めています。その他っていうのも、取得価額と連結BS計上額が同じということは、譲渡性預金等の類でしょう。いずれにせよ、安全性を重視していることは間違いありません。

 

 

BSを一通り見て、キーエンスがいかに堅実な経営をしているかがわかったところで、PLを見てみましょう。

 

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さすがキーエンス、驚愕です。28年6月期の営業利益率は60%近くあります。ぱっと見、この原因は売上原価が非常に少ないことにあることが分かります。

キーエンスは、単体財務諸表で製造原価明細書もつけてくれているので、見てみましょう。

 

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これを見ると、冒頭で述べた通り、やはりキーエンスエンジニアリングに製造を外注しています。

ほとんどが材料費と外注加工費で、労務費はほぼありません。キーエンスは、ほとんど完成されたセンサーを仕入れてきて、それを子会社であるキーエンスエンジニアリングで外注加工してもらい、販売するというビジネスモデルであることがわかりました。

 

 

 

この数字だけを見ると、言葉は悪いですが、「ぼったくりじゃないか!」と言われても仕方ありません。原価率が30%未満なのですから、原価率を60%くらいにして、つまり販売価格を下げてセンサー業界に参入すれば、容易にキーエンスから顧客を奪い取ることができそうです。

しかし、そういったことは実際には起きていません。センサー業界は、ずーっとキーエンスが圧倒的シェアを獲得し続けています。とすれば、やはりキーエンスには他者の追随を許さない何かがあるはずだし、顧客も、原価より3倍ほど高い値段でもキーエンスから製品を買いたくなる理由を持っているはずです。

 

 

 

残念ながら、キーエンスの有報を見てもそういったことは全くわかりません。ここでは情報開示もあまりしていないですね。なんせ、監査報酬も2,000万円と、規模と比較してかなり安いですし。

そこで、キーエンスに勤める友達に聞いたり、ググってみました。そしたら、この高利益率を生み出せる謎が少し解けました。

 

 

 

キーエンスが高利益率である理由は、主に以下の理由だからだということでした。

 

 

・優秀な人材ばかりである

・購買部に非常に優秀な精鋭を揃えることで、仕入価格を限界まで下げている

・徹底したノルマ管理が行われている

・販売だけでなく、コンサルも行う

 

 

ご存知のとおりかもしれませんが、キーエンスは優秀な一握りの人間しか就職できません。学生時代に営業ベンチャーとかで結果を残したり、何か面白いことをやってて、なおかつコミュ力のある人間しか行くことのできない、狭き門であることは間違いありません。

そうした人たちがMAXで結果にコミットできるようにするための、最適なノルマ管理があります。そして、営業成績の評価キーとなるのは、売上金額ではなく利益額。どれだけ製品に付加価値を与えて、顧客に製品を販売することができたかが評価されるのです。

 

 

また、キーエンスの営業社員は、ただ単に製品を販売するだけではないそうです。クライアントに頻繁に赴き、ビジネスのアドバイスも行うことで、他者との差別化を図っています。

 

「今回我々は、このような製品をリリースしました。御社の場合、〇〇な状況のときにぴったりだと思います。ぜひ、購入を検討していただけないでしょうか?」

 

ではなく、

 

 

「御社のビジネスは〇〇のようになっています。しかし、現状では〇〇の部分に問題があるかと思われます。これを解決しようと思ったら、〇〇を行うことが必要になってきますよね?それを行うにあたって最適な製品がうちにはありますよ。」

 

 

こういった営業を行っているのだそうです。

クライアントの社員でも気がつかないようなアドバイスもでてくるのだそうです。だから、高い金を払ってでもキーエンスからセンサーを買おうとする。原価をはるかにうわまるサービスを提供しているのだと思います。

 

 

 

あと、面白いなと思ったのは、優秀な人材の中でも優秀な人を、購買部に揃えているということ。非常に優秀な人たちを集め、原材料等の仕入価格を限界まで低くしているとのことです。こういった売上面、原価面双方から徹底した努力を行なって、はじめてこの高利益率を生み出しているのですね。

 

 

 

 

つまるところ、キーエンスの高利益率の秘訣は、やっぱり「」だと結論付けます。

タイトルで秘密とか書いといて、なんやねんそれって思われそうですが、本当にそうなのです。他にも、絶妙な管理方法とか色々あるかもしれませんが、キーエンスの営業社員は普通の営業社員がやること以上の働きをしているのでしょう。

それが、日本企業で一番給与水準が高い所以でもありますよね。むしろ、叩き出している利益からすればこれでも給与水準は抑えられている方だと思います。

 

 

 

 

調べていて、「人の質がこんなにもビジネスに影響を与えるのか」と思わされました。そう考えると、自分ももっと価値のある人間にならいと、、

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。